MPL(労働の限界生産力)逓減の復習
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労働量を一単位増やしたとき生産量が何単位増加するかという数
値の事を「労働の限界生産力MPL」と呼ぶ。
そして大抵の生産関数は、労働の限界生産力逓減の法則に当ては
まる。つまり生産機械などの量を固定しておいて労働者や労働時間
だけを増やしてみても、労働者が増えるほどには生産量が増えない
のである。だから企業は市場価格をにらみながら、一番利潤が大き
くなる生産量と労働投入量を選ぶことになる。
そこで労働量を一単位増やしたときの利潤の増分を考えると、
Δ利潤 = Δ収入 - Δ費用
= P×ΔY - W×1
=(P×MPL)- W ・・・(*)
だから、企業がとことんまで利潤を追求するとすると、労働量の追
加はΔ利潤=0となるところまで行われることになるから、(*)の式
より
P×MPL = W
となり、さらにこの式を変形すると
MPL = W/P
となる。
このW/Pを特に「実質賃金率(リアル・ウェッジ)」と呼ぶのだ
が、これの便利なところは労働者の賃金を「作った製品の個数(=
産出量)」で表せるということである。
つまり労働はたいてい限界生産力が逓減するからMPLはY-L
グラフに書き込むと右下がりになるが、この時企業の利潤が最大化
するW/Pを書き込むと、最適な労働投入量が決まるのだ!
(なぜならMPL=W/Pだから)
Y(産出量)
↑
| \
| \
| \
W/P|---------- \
| ・\
| ・ \
| ・ \MPL
| ・ \
0 ―――――――――――――――→L(労働量)
L'
つまりMPL曲線は、企業の労働需要曲線だったのである!
同様の理屈で資本の限界生産力MPKも決定される。
すなわち企業はMPK=R/Pまで資本をレンタルする事になる。
R/Pは「資本の実質レンタル料」と呼ばれる。
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経済学上の利潤・会計上の利潤
企業は利潤を最大化するためにMPL=W/Pとなる点まで労働
力Lを投入する。そして利潤を最大化するためにMPK=R/Pと
なる点まで資本を借り入れる。
この時の産出量をYとすると、生産物で測った利潤は
Y-MPL・L-MPK・K
となるが、これを特に
「経済学上の利潤(エコノミック・プロフィット:EP)」
とよぶ。
この式を書き換えると
Y=(MPL・L)+(MPK・K)+EP
となるから、
「総所得」=「労働への報酬」+「資本への報酬」+「EP」
ということになるが、ここでもし生産関数に関して「規模に関する
収穫不変の性質」を仮定すると、経済学上の利潤EPは必ずゼロに
なる。
つまり「モノの値段は労働報酬と資本報酬の合計で表せる!」と
言うことになる。
これは生産関数zY=F(zK、zL)をzで微分してz=1を
代入した式を見れば明らかだ。つまり
Y=F(K、L)= MPK・K + MPL・L
である(オイラーの定理)。
しかしここで一つ疑問が生じる。というのもこれでは企業の利益
がゼロになるから、企業の生産インセンティブはどこからくるのだ
ろうか、、、ということである。
ここで前回の号の最初に書いた「資本は家計からレンタルされる
とする」という仮定の意味がわかってくる。
というのもここまで企業は資本(つまり生産や商売に使う土地建
物や機械)を全部借りるモノだとして考えてきていたが、現実の多
くの企業は資本を「所有」しているわけである。
つまり企業は生産者であると同時に資本の提供者であるから、当
然資本に対する報酬MPK・Kのいくらかを手に入れることができ
るのだ!
だから世間一般でいう「利潤」を特に「会計上の利潤(AP:ア
カウンティング・プロフィット)」と呼ぶとすると、
AP = EP + MPK・K
なのである。
そういうわけだから「規模による収穫一定、利潤の最大化、競争」
という仮定の下でEP=0でも、「利潤」は生じるわけである。
つまり国民所得における利潤は殆ど資本に対する報酬であり、
「国民所得(総産出)は、限界生産力に応じて労働報酬と資本報酬
に分配される!」
のである。