フィッシャー効果
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経済学者は、銀行などが支払う利子率のことを「名目利子率」
と呼び、預金者の購買力の増加率を「実質利子率」と呼ぶ。
名目利子率をi、実質利子率をrとし、インフレ率をπとすると、
r=i-π、 または、i=r+π
である。
この i=r+π を特に「フィッシャーの方程式」と呼ぶ。
すなわち名目利子率とは、実質利子率とインフレ率の和だという
ことである。
そしてこの方程式によるとインフレ率の1%の上昇は名目利子率
の1%の上昇を招く。
インフレ率の変化と名目利子率の変化が1対1の関係にあることを
特に「フィッシャー効果」と呼ぶ。
アメリカのデータでは、インフレと名目利子率に確かに強い相関
関係が見られる。
(※ 前回登場した貨幣数量説が適応できるような状態であれば、
貨幣量の1%の増加は1%のインフレを招き、名目利子率も1%ほ
ど引き上げてしまうことになる)
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名目利子率を決定するモノとは?
さて資金を借りる場合、借りる方も貸す方も、将来の実質利子率
については、わからないわけである。
すなわち名目利子率iで金を貸し借りしても、実質利子率rは、
後でわかるインフレ率πを用いて r=i-π となるわけだから、
事後になってみないとわからないのである。
そういうわけで資金の貸し借りを行う前に考えていたインフレ率
(予想インフレ率)をπ’とすると、
・事前の実質利子率r’は r’= i-π’
・事後の実質利子率r は r = i-π
となる。
では名目利子率iは、どのように決定されるのか? というと、
「名目利子率は銀行などが金を貸し出す利子率」だから、もちろん
「事前の予想インフレ率π’によって決定される」のである!
ということは実は、名目利子率を押し上げるのは、予想インフレ
率なのである!
そして人間はたいてい、現在の状況から将来を予測するわけだか
ら、予想インフレ率というのは現在のインフレ率の延長線上の値に
ある。
つまり去年のインフレ率が現在の名目利子率を決定し、現在のイ
ンフレ率が来年の名目利子率を決めることになる。
そう考えて127ページの図4-3のグラフ(アメリカのインフレと名
目利子率)を見ると、確かにインフレ率と名目利子率の動きがズレ
ていて、名目利子率がインフレ率を追いかけている感じである。
ただしフィッシャー効果は19世紀のデータには当てはまらない。
フィッシャー効果が出る経済状態と、そうでない経済状態がある
のである。