実質為替レートεと純輸出NX
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日本円の実質為替レートが高くなれば、日本のモノやサービスを
買うよりも外国のモノやサービスを買う方が安く付く。
そして一方海外から見れば日本のモノやサービスは相対的に高く
なる。
つまりレートが高くなれば海外からの輸入は増え、日本からの
輸出は減るということになる(純輸出が減少)。
逆に日本円の実質為替レートが低くなれば、日本のモノやサービ
スを買う方が外国のモノやサービスを買うより安く付くので、海外
からの輸入は減り、日本からの輸出は増える(純輸出が増大)。
これをグラフにすると、実質為替レートε(イプシロン)が増え
ると純輸出NXはマイナス方向に動き、εが減るとNXはプラス方向に
動くから、εとNXは反比例のような感じになり、下図のように右下
がりの曲線となる。
で、上の復習のところで述べたとおり、小国開放経済ではNXは
「世界利子率r*によって国内投資Iが決まり、また一方国内貯蓄S
は国内の政策によって決まる」というわけだから、S-I=(定数)
となり、この国の実質為替レートは下図のε*の点で釣り合いがとれ
るということになる。
ε(実質為替レート)
↑ S-I
| \ |
| \ |
| \ |
| \ |
| \|
ε*| --------------\
| |\ NX=NX(ε)
| | \
0 ―――――――――――――――→NX(純輸出)
貿易赤字←0→貿易黒字
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実質為替レートεと政策
国民所得勘定の恒等式を純輸出で括ると、
NX =Y-(C+I+G)=(Y-C-G)-I
=S-I
ということだから、政府が政府購入Gを増やすと貯蓄Sは減る。
Sが減れば当然S-I=NXも減ることになるから、下図1のよ
うにS-Iが左へシフトし、実質為替レート水準はε’へと上昇す
る。
<< 図1 >>
ε(実質為替レート)
↑ S-I
| \ |← |
| \| |
ε'|----------\ |
| |\ |
↑ | | \|
ε*|----------|----\
| | |\ NX=NX(ε)
| | | \
0 ―――――――――――――――→NX(純輸出)
貿易赤字 ←← 貿易黒字
逆に政府が政府購入Gを減らせばS-I曲線は右へとシフトし、
実質為替レートの均衡水準は下がる(図2)。
<< 図2 >>
ε(実質為替レート)
↑ S-I
| \ |→ |
| \| |
ε*|----------\ |
| |\ |
↓| | \|
ε"|----------|----\
| | |\ NX=NX(ε)
| | | \
0 ―――――――――――――――→NX(純輸出)
貿易赤字 →→ 貿易黒字
また政府が税金Tを増やす(増税)と、可処分所得が減って消費
Cが減り、政府貯蓄も増えるから、国民貯蓄Sが増える。
そうなると当然S-Iは増えるから、図2のようになり実質為替
レートεは下がる。
逆に政府が税金Tを減らす(減税)と、可処分所得が増えて消費
Cが増え、一方政府貯蓄は減るから、国民貯蓄Sが減る。
そうなるとS-Iは減るから、図1のようになり実質為替レート
εは上がる。
<まとめ>
政府が政府購入を増やす →国民貯蓄Sが減る
→S-Iが減るから純輸出NXが減る
→実質為替レートεとNXは逆相関だ
からεは上がる。
政府が政府購入を減らす →国民貯蓄Sが増える
→S-Iが増えて純輸出NXも増える
→実質為替レートεとNXは逆相関だ
からεは下がる。
政府が増税する →国民貯蓄Sが増える
→S-Iが増えて純輸出NXも増える
→実質為替レートεとNXは逆相関だ
からεは下がる。
政府が減税する →国民貯蓄Sが減る
→S-Iが減るから純輸出NXが減る
→実質為替レートεとNXは逆相関だ
からεは上がる。