金融政策のルール
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前回見てきたとおり、裁量で経済政策を行うことは経済の政治に
対する不信感を増大させる。
この前当局はこう言ったが、次は何を言い出すかわからない、、
そんな状態では、だんだん政策の効果が薄れてくる。
またそのうち風向きが変わるだろう、、また変更があるだろう、、
そういうことを織り込みながら企業は生産計画を立てるし、家計も
減税の後は増税があるだろうと考えて、減税しても支出を絞り込む。
つまり裁量で経済政策を行うと「不完全なコミットメント問題」
が発生して政策の効果がなくなってしまうのである。
ではルールで経済政策を行う場合、そのような問題が起こらない
と言えるのだろうか?
たとえばマネタリストは貨幣供給の変動が経済変動を起こすと考
えている。
貨幣供給をずっと増大させれば経済はずっと成長し、貨幣供給を
上手くコントロールすれば、不況を遠ざけ安定的な産出や雇用や物
価を保てるという考えである。
だがこれが成り立つのは貨幣の流通速度が一定の場合であって、
1980年代後半の急激な流通速度の下降時には当てはまらない。
貨幣の流通方程式は
M・V = P・Y
{貨幣供給量}×{流通速度}={価格水準}×{産出量}
だから、Vが安定的でないとMの供給量でGDPのコントロールはで
きないというわけである。
(※PはGDPデフレータ、YはGDPでかけると名目GDPとなる)
そして経済に生じるその他の様々なショックに対しても、貨幣の
供給量をうまくコントロールして対処しなければ、貨幣供給だけで
経済を安定化させることなどできはしない。
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GDP目標・物価目標・その他の目標
経済を安定させるには、政府がGDPの目標を定めてそれに貨幣供給
を合わせるという考え方もある。
目標よりGDPの成長速度が大きければ貨幣供給を少なくし、逆に
GDPの成長速度が目標を下回りそうであれば貨幣供給を増やして対処
する、、、というわけである。
また政府が物価水準を設定して、それに対して貨幣供給量を調整
するという場合もある。
インフレが更新する場合は基本的に貨幣供給量がダブついている
わけだから、貨幣供給量を絞る。
逆にデフレが起こる可能性があるならば貨幣供給が足りないので、
公定歩合などを下げたり国債を買い戻したりして貨幣供給を増やす。
(貨幣需要が十分あるならば、調整が可能)
そして政府が目標にするのは経済へのショックの緩和や、GDP目
標や物価の安定以外にも、失業率の安定もある。
何を第一目標にし何を第二目標にするかハッキリすれば、貨幣供
給などの金融政策は非常に効率的な政策となるが、その目標がハッ
キリしなければ裁量で政策を行う場合と同じく不安定なモノとなる。