賃金の下方硬直性の三つの原因
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賃金の下方硬直性には、三つの原因があると考えられている。
その三つとは「最低賃金法」「労働組合の独占力」「効率性賃金」
の三つで、いずれも賃金水準がある一定水準以上下がるのをくい止
める働きを持っている。
1)最低賃金法
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たいていの熟練労働者は、最低賃金法で定められているより高い
賃金を受け取っている。
だがしかし十代の若者や未熟練労働者は、最低賃金法で定められ
ている賃金に見合わないだけの生産性しか達成しないことが多い。
彼らは仕事が出来ないのに高目の賃金を受け取り、職場における
仕事のトレーニング(OJT:オンザジョブトレーニング)による
スキル・アップという恩恵も受け取っている。
すなわち企業は彼らに余分な報酬と、職業訓練(もちろんこれも
費用がかかる)を施すということをしているわけである。
最低賃金の設定を10%引き上げると、十代の失業率が1~3%
も増えるという計算結果もでているので、経済学者たちは彼らに対
する最低賃金を別枠で設定すべきだと主張した。
だがその政策を実行した地域では、十代の失業率は下がったが代
わりに未熟練労働者の失業率が上がるという事態が生じてしまった。
つまり十代の若者の雇用とそれ以外の未熟練労働者の雇用は、ト
レード・オフの関係にあったのだ。
そういうわけで最低賃金を年齢で別枠で設定するという政策は、
現在では殆ど行われていない。
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最低賃金法と有職貧困層
最低賃金は、貧困から少し抜け出すていどの生活水準を可能にす
る賃金水準に定められている。
だから職には就いているが最低賃金程度しか受け取っていない労
働者の生活は、かなり切りつめたモノになっている。
だから彼らの生活水準を引き上げるために、最低賃金を引き上げ
ようという動きは常にある。
しかし実を言うと最低賃金を受け取っている労働者の多くは、中
流階級以上の裕福な家庭に育つ十代の若者なのである。
彼らはそうしてマクドナルドやバーガーキングで小遣いを稼ぐわ
けであるが、雇用主が未熟練労働者を同じ賃金で雇うなら、貧相な
貧乏人を雇うより、裕福な家庭に育った顔色の良い若者を選ぶのは
当然である。
そうなると最低賃金の引き上げは、裕福な家庭の子供の小遣いを
増やし、その一方で貧困層の失業率を上げてしまうのである。
そういうわけで有職貧困層の生活水準を引き上げるには、最低賃
金を引き上げるより、様々な免税措置によって可処分所得を増やす
方が効果的であると考えられている。
これなら企業の負担するコストは増えないから、失業率に影響を
殆ど与えない。
もちろんその分、自治体の税収は減ることになるのだが、、、
2)労働組合運動による独占
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労働組合の運動も賃金の硬直化を招き、失業率を引き上げる。
(詳しくは次号に回します)
3)効率性賃金
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企業は均衡水準よりも高目の賃金を支払う傾向がある。
これを「効率性賃金」という。
これは均衡水準より高い報酬を支払うと、クビになって再就職し
た場合にそれより低い水準の報酬しか受け取ることが出来なくなる
ので、労働者に誠実に働くインセンティブが生まれるからである。
(モラル・ハザードの防止)
そして高めの賃金は優秀な人材を集めやすく、低めの賃金は有能
な人材を流出させやすいというのも、高めの賃金が支給される理由
の一つである。
効率性賃金は均衡水準より高めの賃金を支払う行為だから、その
分雇用される人数は減ることになる。
これによって待機失業が生じるというのが「シャピロ=スティグ
リッツの説」である。
(詳しくは「組織の経済学」に出てきたので、省略します)