貨幣量のコントロール
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利用可能な貨幣の量のことを「マネーサプライ(貨幣供給量)」
と呼ぶ。
金や銀などの商品貨幣を用いている経済ならば、金や銀などの総
量によってマネーサプライは決まってしまう。
一方現代の経済のようにフィアット・マネー(不換紙幣)を用い
る経済では、マネーサプライはそのフィアット・マネーの発行量や
流通量を調整することによってコントロールされる。
さてマネーサプライの管理のことを「金融政策」と呼ぶが、政府
や中央銀行などは国債の売買によって市中に出回る貨幣の量を調整
する事が多い。
すなわちマネーサプライを増やす場合には市中に出回っている国
債を政府や中央銀行が買い入れて貨幣を増やし、逆にマネーサプラ
イを減らす場合には国債を売りだして市中に出回っている貨幣を引
き上げる。
もちろん金融政策には他にも様々な方法があるが、大事なのは中
央銀行が直接的にマネーサプライをコントロールする能力を持って
いるということである(詳しくは後に短期分析で検討する)。
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貨幣量の測定
貨幣が商品貨幣である場合には、貨幣量の測定は比較的簡単であ
る。
金銀を貨幣として用いている場合には、経済に存在する金銀の総
量がすなわち貨幣量である。
捕虜収容所のようにタバコが貨幣として用いられている場合には、
タバコの総本数が全貨幣量である。
ところがフィアット・マネーが盛んに用いられるようになると、
そのような単純な形で貨幣量を測定することができなくなってくる。
というのも貨幣とは
「取引・決済に即座に使用しうる資産ストック」
だから、ある種の信用さえあれば様々な形の貨幣が存在しうるから
である。
まず第一が、紙幣と硬貨の「現金通貨(カレンシー)」である。
そして第二が、小切手などと言った「要求払い預金(デマンド・
デポジット)通貨」である。
小切手は銀行の当座預金に預金があることを前提に出回るが、請
求が無ければ紙幣や硬貨は移動しない。
すなわち小切手が有効であれば、小切手も取引や決済に即座に使
用しうる資本ストックであり、紙幣や硬貨などのかわりに流通する
わけである。
銀行は集めた現金通貨を元に小切手を発行し、集めた金の何倍モ
ノ金を貸し出す(信用創造)から、世間に流通している決済手段と
しての貨幣量は「現金+小切手」と言う風に計算できるわけである。
小切手のような「現金通貨以外の貨幣」は他にも様々あって、た
とえば海外旅行に行ったときなどに使う「トラベラーズ・チェック」
などもその一つである。
他にも「譲渡性預金CD」「準通貨」「条件付き取引」「短期金
融市場預金勘定」「郵便局や農協・漁協貯金」「小口定期預金」、、
などがあって、マネーサプライの大きさを一つに測定するのは非常
に難しい。
すなわち「貨幣ストック」の尺度はかなり曖昧なのである。
だが通常は現金通貨(C)に要求払い預金(デマンド・デポジッ
ト)や他の小切手勘定預金とトラベラーズ・チェックなどを加えた
「M1」という尺度か、さらにそれに流動性の高い(すなわち現金
のようによく扱われる)預貯金を加えた「M2」という尺度が用い
られることが多い。
貨幣の尺度は国によって異なるので、注意が必要である。