ずっとあると思う所得
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アービング・フィッシャー、モジリアーニにつづき、1957年ミル
トン・フリードマンは、恒常所得仮説を提出した。
ケインズが消費者の消費行動を「現在所得」によるものと考え、
フィッシャーやモジリアーニが「現在所得」と「将来所得見込み」
の二つによって決まるモノと考えたのとは異なり、フリードマンは
「所得の固定部分」と「所得の変動部分」の二つによって決まると
考えた。
つまり消費者は定収入と臨時収入のバランスによって貯蓄を増や
したり減らしたりするのだ、ということである。
たとえば農家のように毎年の気候に応じて収入が天と地ほども変
わってしまうような家計であれば、当然保険料や貯蓄に回す金が増
えるだろう。
ある年に大儲けをしたとしても、次の年はどうなるかわからない
という状況だと、儲けすぎた金を全部使い果たすような行動はなか
なかとらないだろう。
なるべく金を多めに残し、大損する年の穴埋めのためにとってお
くことだろう。
そして一方公務員のような月給もボーナス(期末手当)も決まっ
た額をもらえる職業であれば、貯蓄を増やす必要はあまりない。
来年も再来年もその次も殆ど同水準の所得であれば、貯蓄や借入
を駆使して毎年の消費を平均化するような努力は必要ない。
そういうわけでフリードマンは、
「消費者の消費は、恒常的だと考える所得に比例する」
と考えた。
毎年確実に得られる所得の割りあいが大きければ、毎年の消費も
大きくなり、確実に得られる所得の割合が小さく変動部分が大きい
消費者の消費は小さくなる。
これを C=α × Yp と表現する(Ypのpはパーマネントのp)。
※ここでαは定数である。
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減税と消費
フリードマンの消費関数をYで割ると、平均消費性向APCとなる。
C/Y = α×Yp/Y
この式を見ると、所得Yが恒常所得Ypより大きくなると平均消費
性向APCは下がることがわかる。
一方所得Yが恒常所得Ypとほぼ同じであると、平均消費性向APC
は100%近くになる。
低収入の年は恒常所得Ypと所得Yの差があまりないだろう。
そうすると当然、所得が低い年の平均消費性向は高くなる。
一方高収入の年は、実際の所得Yと恒常所得Ypの差が大きくなる。
そうするとこの年の平均消費性向は当然低くなるから、これは
「所得が低いと平均消費性向は高くなり、所得が高くなるにつれて
平均消費性向は下がっていく」
という短期の消費関数の説明として妥当なモノとなる。
しかし長期的なスパンで考えると、恒常的な所得がどのくらいか
は想像に難くなくなる。
大学を卒業して一流会社に勤めて順調に出世していれば、恒常的
な収入が段階的に上がっていくというのは予想の範囲内の出来事で
あるから、所得が増えても平均消費性向は下がらない。
これは事業主でも同様で、長期的な経済状況から来年の収入は何
となく予想できるから、所得が増えても平均消費性向は下がらない。