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貨幣の数量方程式

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 貨幣をM、
 流通速度をV、
 価格をP、
 取引数をT
とすると、これらの関係は M×V = P×T と書ける。

 

 貨幣Mというのは前回定義したとおり「現金通貨」と「要求払い
預金」の合計である。

 

 が、それでは少しイメージしにくいので、ここでは現金通貨(紙
幣と硬貨)で考えておけば良いだろう。 

 

 で、貨幣というのは人から人の手にどんどん移動していくものだ
から貨幣の移動速度というモノが考え得る。これを流通速度という。

 

 流通速度とは、単位時間(たとえば一年とか一月とか)当たりに
貨幣Mが何回所有者を替えたか、、、ということであって、財やサ
ービスの「取引回数」に関係のある話である。

 

 そういうわけで右辺には財やサービスの取引回数Tが現れること
になり、 M×V = P×T となるわけである。

 

 理解しやすいように簡単な例を挙げる。

 

 

<例>
 たとえばある年に、一個50円のパンが60万個売れたとする。
 つまりP=50円/個、T=60万回/年、であるから取引に使われた
貨幣の総額は 50×60=3000万円 ということになる。 

 

 そしてもしこの経済に貨幣が紙幣と硬貨を合わせて100万円分しか
なかったとすると、貨幣の流通速度Vは、

 

 V=(P×T)/M = 50×60/100 = 30 (回/年)

 

となり、100万円分の紙幣と硬貨が一年間で30回人から人へと移動し
たのだということになるわけである。

 

 細かく言えば、M×V = P×T は、

 

   Σ(m・v) = Σ(p・t) 

 

と言うことになるだろう。

 

 つまり左辺は一円玉全体が年に5回所有者が替わり、五円玉が年に
5回移動し、…、一万円札が年に100回移動し…、ということであり、
右辺は価格50円のラーメンが年に一億回取り引きされ、価格100円の
カップヌードルが10億個売れ、…、という風になる。

 

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実質貨幣残高

 

 だが実際にこの方法で貨幣の流通速度を計算するのはそう簡単な
ことではない。というのも取引回数を測定するのがえらく難しいか
らである。

 

 だからより簡単にその経済における貨幣の流通速度を計算するた
めに、取引回数Tに替えて総生産高Yを用いることにする。

 

 つまり実質GDPを総生産高Y、GDPデフレータをP、とする
と、名目GDPは P×Y で表すことができるから、

 

    M×V = P×Y

 

と言う風になるわけである。

 

 この時のVは「貨幣の所得流通速度」と呼ばれ、前述のVとは少
し値が異なるが相関関係があるのでさして問題はない。

 

 で、ここで貨幣でどれだけの財やサービスを購入できるかという
事を考える。

 

 この教科書の最初の方で「実質賃金」といって、労働者に支払わ
れる賃金が実際の生産物何個分にあたるか(W/P)という尺度を考
えたが、それと同じ感じで M/P を

 

「貨幣の実質貨幣残高(リアル・マネー・バランス」」

 

と呼ぶことにする。

 

 そうすると、貨幣需要関数というモノが考えられる。

 

 すなわち人々が手元に保有しておきたいと考えるリアル・マネー
を決定する関数である。

 

 そして貨幣需要関数は国民所得Yに比例する関数になるのだが、
それは経済が発展して実質的な国民所得Y(実質GDP)が増える
と、モノがたくさん買えることになり、モノをたくさん買えるため
には貨幣がたくさん必要になるからである(この辺はもう一つ良く
理解していないのでいい加減な説明だが)。

 

 つまり経済が発展して国民所得Yが増えると、それだけ発行され
ている貨幣Mでよりたくさんのモノが買えねばならないから、定数
kを用いて、
   M/P = k・Y
という貨幣の需要関数が考え得るのである。

 

 そうしてこの式を変形すると、

 

  M×(1/k) = P×Y

 

となるから、1/k を V と置くと、さっきの数量方程式になるわ
けである。

 

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