クラウディング・アウト
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国民所得勘定の恒等式:
Y(総生産)=C(消費)+I(投資)+G(政府購入)
+NX(純輸出)
貯蓄S:
S(貯蓄)=Y(総生産)-T(税金)-C(Y-T)
■投資・利子率・貯蓄
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Y:産出量(国内総生産GDP)、C:消費、I:投資
G:政府購入、T:税金 r:利子率 について、
Y=C+I+G、C=C(Y-T)、I=I(r)
∴ Y=C(Y-T)+I(r)+G ……(*)
となるが、ここでGとTは政府によって決められていて一定だし、
Yは存在する生産要素(資本や労働力)と生産関数(生産技術)に
よって決まってしまうのでこれも一定。結局一定でないのは
I=I(r)だけである。
さて利子率rと投資Iは逆相関関係にある。そして
(1)利子率rが高すぎると投資が少なくなりすぎて、産出物への需要
は供給に満たなくなる。つまり
Y>C+I+G
である。
(2)利子率rが小さすぎると投資が多くなりすぎて、
Y<C+I+G
となる(需要が供給を上回る)。
ここで国民所得勘定の恒等式Y=C+I+Gを変形すると、
I=Y-C-G =(Y-T-C)+(T-G)
と書き直せるが、Y-T-Cは総生産から税金と消費を差し引いた
額だから「貯蓄S(セービング)」である。
YとTとGは一定だから「投資と消費関数」が相関であり、貯蓄
SもS=Y-C-G=I(r)だから、一定になる。
だから貯蓄が利子率に依存しないモデルにおいての貯蓄と投資・
利子率の関係は、下のグラフのようになる。
r'がつまり「均衡利子率」である。
r(利子率)
↑ S(一定)
| \ |
| \ |
| \|
r'|---------- \
| |\
| | \
| | \I=I(r)
| | \
0 ―――――――――――――――→I、S(投資;貯蓄)
S
つまり
「利子率は投資が貯蓄に等しくなるまで調整される」
のである。
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政府購入Gの増加
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■政府購入Gの増加
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政府購入がΔGだけ増える時の影響を考える。
今考えているモデルは外国との取引を無視できるモデルであるか
ら、国民所得勘定の恒等式はNX=0となり、
Y(総生産)=C(消費)+I(投資)+G(政府購入)
である。
この時GがΔGだけ増加するとYやT(税金)は不変だからCも
不変(なぜならC=C(Y-T)だから)。よって
I+G=I'+(G+ΔG)
より投資がΔGだけ減らざるをえない。
そうなるとどうなるか?
つまり利子率rが上昇して投資Iがそれだけ減るのである!
このように政府の拡張的財政によって利子率が上昇し投資が減退
することを特に「クラウティング・アウト」という。
このカラクリは簡単である。
というのも政府が政府購入をΔGだけ増やすためにはその資金を
調達しなければならないが、それは貯蓄の減少を意味する。
すなわち前回の利子率-投資(貯蓄)グラフのSが左に寄るので
ある。
貯蓄が減れば資金の需給関係から利子率が上昇する。
r(利子率)
↑ S' ← S
| \ | |
| \| |
r'|--------- \ |
| |\ |
↑ | | \|
r |----------------\
| | |\I=I(r)
| | | \
0 ―――――――――――――――→I、S(投資;貯蓄)
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■租税の減少
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次にΔTだけ租税が減少する場合について考えよう。
これまでの式でTが登場するのは貯蓄と消費の式である。
すなわちS=Y-T-C、C=C(Y-T)だが、減税は可処分所
得額を増やすから消費を増やす。
この時の消費の増加分は、限界消費性向MPC(可処分所得が一
単位増えたときの消費に回る度合い)にΔTをかけたモノとなる。
つまりMPCが大きいほど減税による消費増加は増える。
だが生産要素から総生産Yは一定である。この場合Gも一定であ
るから、結局増えた消費の増分MPC・ΔTだけ「投資が減る」!
つまり貯蓄S=Y-T-Cだから貯蓄が減り、均衡利子率rが
やはり上昇してしまうのである。
1980年代に合衆国大統領レーガンは大減税と軍備のための支出を
大規模に増やしたが、その結果は利子率の上昇と貯蓄率の低下を招
くことになった。
単純なモデルであるからといって非現実的であるわけでもない。