長期的視点と短期的視点の違いとは
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長期的視点とはすなわち諸価格が「伸縮的」で「長期的には需要
と供給のバランスが調整される方向に進んで均衡する」という考え
を前提とした視点である。
しかし短期的な視点に立つと、価格はまるで伸縮的ではない。
不景気でもなかなかモノの値段は下がらないし、不景気になって
労働市場が買い手市場になったとしても、現在働いている労働者の
賃金が急に下がるということはない。
高い仕入値で仕入れた商品を安く売るわけにはなかなか行かず、
賃金も新しく雇う人間に対してだけ引き下げられる(もちろんボー
ナスなどは減るだろうが)。
長期分析では突然中央銀行が貨幣流通量を5%減らしたとすれば、
各企業は名目的に販売価格を5%引き下げ、従業員に支払う賃金も
名目的に5%引き下げることになり(※実質価格は変化しない)、
実質的な生産や消費及び雇用には何ら影響を与えないことになるが、
短期的な視点に立つ分析ではそのような現象は観察されない。
短期分析において価格というモノは非常に「硬直的」なのである。
価格がなぜそんなに硬直的であるかはハッキリしていないが、短
期的に価格が硬直的であると言うことは殆ど全ての経済学者が認め
るところである。
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長期的な生産量(総供給)
生産量は、資本(機械や材料)と労働の存在量および利用可能な
技術の水準によって決定される。
ここで資本をK、労働をL、生産関数をFとしたときの生産量Y
は、Y=F(K、L)と表現することができる(前述)。
で、古典派モデルの仮定によると
「生産量は物価水準に左右されず、物価がどうであろうとも生産高
は変わらない」
ということであるので、総供給曲線(AS)は下図のように垂直に立
つことになる。
物価水準によって左右されない生産量とは、資本(生産設備)や
労働力が100%利用された状態での生産量であるから、特に
「完全雇用生産量」と呼ばれる。
<<長期的な完全雇用生産量>> P(物価水準)
↑ LRAS
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0 ―――――――――――――――→Y(産出、所得)
もちろん完全雇用が達成されると言うのは長期分析でも考えたよ
うに「ほとんど不可能」であり、自然状態でも「サーチング/マッ
チング状態(離職した求職者が新しい職を探したり、求職者とその
要望に合致した雇い主と出会うまでの時間的なズレ)」が生じるの
で、これに替えて自然雇用率での生産量「自然率生産量」を考える
場合もある。
P(物価水準)
↑ LRAS
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0 ―――――――――――――――→Y(産出、所得)
貨幣の数量方程式:MV=PY であるから、貨幣の流通量Mや
流通速度Vが減るとPYが小さくなる。
PYが小さくなると需要曲線(Dカーブ)は上図では0の方に近
づくことになる。
このとき総生産(総供給AS)は変化しないので、その分だけ物価
水準が下がることになる(デフレ)。
インフレの話のところで登場した「貨幣数量説」そのままである。
※インフレは貨幣が貨幣需要より多く発行されているから起こると
いう話。