実質利子率rと対外純投資NFI
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閉鎖経済ではNX=0であることから、実質利子率rはS=Iと
なるような水準で決定される。
<<参考>>
r(利子率)
↑
| \ → \ /S=S(r)
| \ \ /
r'| \ \/
| \ /\
↑| \/ \
r| /\ \
| / \ \I'=I(r)
| I=I(r)
0 ―――――――――――――――→I、S(投資;貯蓄)
S → S'
一方小国開放経済などのモデルでは、実質利子率rは世界利子率
r*で固定され(r*は世界貯蓄Swと世界投資Iwが釣り合う水準で決
まる)ていた。
しかしこれから考える大国開放経済では、利子率rはどちらでも
なく「その中間をウロウロするモノ」だと考えられる。
というのもたとえば経済大国アメリカの金利を考えた場合、アメ
リカの実質利子率raが、世界利子率r*と同じではないからである。
しかしではアメリカの実質金利raがアメリカ国内の貯蓄と投資が
バランスする水準、すなわちSa=Iaとなる水準に近いかというと、
そうでもない。
アメリカは国内貯蓄Saより国内の資金需要Iaの方がたいてい大
きいので、実質金利raは高くなる傾向にあるが、それでもSa=Ia
となる水準よりは低くなる。
開放経済だから海外からアメリカ国内へ流入する資金が大量にあ
り、その分金利水準は低くなっているのだ(といっても世界金利よ
りは高くなるわけだが)。
つまり大国開放経済モデルではまず、利子率rと対外純投資NFI
(ネット・フォーリンインベスト?)の関係を重視しなければなら
ない。
大ざっぱに言うと大国経済の利子率rが世界利子率r*より高けれ
ば、資金が海外から集まってきてNFIはマイナスになり、逆にr
がr*より低ければ資金は海外に流出する(つまりNFIがプラス)。
すなわち対外純投資NFIは金利rの関数である。
これをNFI(r) と書くことにする。
r(実質金利)
↑
| \
| \
| \
r* |---------- \
| ・\
| ・ \
| ・ \
| ・ \
――――――――――――→ NFI(対外純投資)
(資金流入) 0 (資金流出)
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貸付資金市場と外為市場
閉鎖経済において国民貯蓄Sは全て国内投資に回されるから、式
としてはS=Iである。
では開放経済における国民貯蓄Sはどこへ行く? と考えれば、
国内投資Iと対外純投資NFIに行く、、ということになり、式で
表せば、
S=I+NFI
ということになる。
で、このSとIとNFIが何によって決まるかと言えば、国民貯
蓄SはS=Y-C-Gだから、国内総生産GDPと消費C=C(Y-
T)と政府購入Gによって決まり、一方IとNFIは実質利子率rに
よって決まる。
国民貯蓄はこれまで何度も出てきたように「政府の政策によって
決まってしまう」ものだから、ある期間においては一定である。
となると、大国開放経済における実質利子率rは、下のグラフの
ような感じで決まることになる。
↑
| \ |S(一定)
| \ |
| \ |
| \|
r|---------- |
| |\
| | \I(r)+NFI(r)
| | \
| | \
0 ―――――――――――――――→S、I+NFI
※I(r)+NFI(r)が右下がりなのは、実質金利が低いほど儲けが
でる投資が増えるからである。
そしてこの時この開放経済の実質為替レートがどうなっているか
を考えると、NX=S-I=NFIという関係から、
NX=NFI(r)
となり、下のグラフのように実質為替レートεが決まることになる。
↑
| \ |NFI(r)
| \ |
| \ |
| \|
ε|---------- |
| |\
| | \ NX(ε)
| | \
| | \
0 ―――――――――――――――→NX
NFI(r)
実質為替レートの変動は名目為替レートの変動につながる。
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■今週のまとめ
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大国開放経済の実質利子率は、S=I(r)+NFI(r)となるr
に決まる。
実質為替レートεは、NX=S-I=NFIという関係から、
NX(ε)=NFI(r) となるεに決まる。