変身経済は「知恵」を消費し「人々を励ます」経済
農産物や鉱物を扱う企業は、顧客の必要とする財を自然界から採取したり抽出して提供する。
製品を扱う企業は、コモディティや他の工業製品を仕入れて加工し、顧客に必要な財を製造する。
そしてサービスを扱う企業は、コモディティや製品を選択し、利用できる状態に準備し、顧客が欲するときにオンデマンドでサービスを提供する。
さらにエクスペリエンスを提供する企業は、脱日常的な空間を舞台として設定し、様々な演出や記念品を用意して、顧客に感動や思い出をつくる舞台を用意する。
それではトランスフォーメーション・バリュー(変身価値)を提供する企業は、何をするのか?と言うと、それは
人々や企業をそれぞれ望むような状態に変身させるには、どうすればその変身が可能になるか、というガイダンスが必要である。
変身するためには、いつ・どこで・誰が・どういう経験や体験を経なければならないかという情報を、顧客に伝えなければならない。
それを示すのがまず最初の仕事である。
だがこういう情報を示すだけでは、単なる情報サービスにしかならない。
フィットネスクラブで格好いいスポーツ者になろうと望んでいる顧客に、「このトレーニングをすると上腕三頭筋が鍛えられます」「プロテインやサプリメントを取ると身体能力が10%以上アップします」なんていう情報を提供するだけでは、顧客は格好いいスポーツ者には変身できないし、フィットネスクラブが顧客に変身価値を売るということにもならない。
これでは単にガイダンスをしただけということである。
変身価値を売る企業は、顧客が変身するという結果に対して保証をしたり成功報酬をもらう。
変身できるからこそ、顧客は高い報酬を払う。
情報提供するだけでお終いというわけにはいかない。
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変身価値は、情報を与えるだけでは不十分
企業が変身価値を売る場合、顧客が望む変身が成し遂げられねばならない。
だが変身とは個人の心の中で起こるものだから、多かれ少なかれ何らかの困難な経験を経なければ、変身という現象は起こらない。
たくさんのステップを踏むことが必要な場合もあるし、大量な経験が必要となることも多いだろう。
そして変身するまでに間違った方向へ進んだり、あるいは何年も何十年も時間がかかったりすることもある。
だから顧客は変身できそうな見込みや実感がなければ、そこでトレーニングを止めてしまう。
あとちょっとのところでトレーニングが終了するところであっても、様々な理由をつけて止めてしまう。
だから変身価値を提供する企業は顧客を「励ます」という作業と、今どのくらい変身しているかを実感してもらうための「評価」という作業が大事となる。
ボディ・ビルやパワー・リフティングなどでは、ポーズを作ったりバーベルを持ち上げたりするときに、ただの練習中でも仲間が「カッコいい!」「決まった!」「上がる、上がる」「上がってる上がってる」なんて大声で声援を送る。
筋肉もりもりの、端から見たら無茶苦茶たくましい男女が、泣きごとを言い、今にでも崩れ落ちそうなのを、必死で励まし達成させる。
それはその苦しさを他のみんなが知っており、挫折しやすいことを知っているからである。
そしてなおかつその向こうに成功(達成感)があることを、みんなが知っているからである。
そんなボディ・ビルダーやパワーリフターたちのように、変身価値を売る者は、顧客が変身のための経験を乗り越えることをを励まし、応援しなければならない。
そして顧客が困難を乗り越えそれによって変身すれば、その変身を維持する方策を講じ、困難を乗り越えるのに失敗すれば再挑戦や代替策を勧める。
そうして顧客の変身したい姿に近づくようなアイディアを用意する。
経済が経験価値化すると世界は舞台となるが、さらに進んで変身経済化すると、世界は励ましあいそれにともなってヒト・カネ・モノが動くのである。