顧客には好印象をもたらすキューのみ提供しなければならない。
顧客が様々なイメージを持つのは、そのイメージをもたらすキューが存在するからである。
たとえば店の窓枠にほこりがたまっていると、顧客はその店はほこりっぽいという印象を持つ。
店の隅にゴキブリの死骸が転がっていると、そのレストランは不潔だと言う印象を持つ。
顧客がそういう印象を持つのは、そういう印象を持つ原因のキューが存在するからである。
因みにキューcueとは「きっかけ」や「合図」のことであるが、顧客に好印象を与えるキューは表舞台に出し、マイナスの印象を与えるキューは舞台裏に隠さなければならない。
さもなくば顧客はかならず悪い印象を持つだろう。
テキストではニューオリンズの郊外にある病院の例を挙げている。
この病院は「温かさ・配慮・プロフェッショナリズム」という印象を、作り出すというテーマで設計された。
職員には名札に資格と学位を明記させ、病室にはいるのにもノックさせるよう指導した。
患者や見舞客などが通る通路やロビーを「舞台」として位置づけ、医師や看護士が立ち話をしたり血液を運んだりする通路は、「舞台裏」として患者や見舞客から見えないようにした。
通路は院内の場所によって別の床材を使って患者や見舞客が戸惑わないようにし、患者が見つめることの多いリハビリ室などの天井には絵画をペイントした。
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これらは患者や見舞客に好印象を与えるキューを作って舞台に上げ、悪印象を与えるキューを舞台裏に隠すということで、この病院を訪れた者に温かさと配慮と、プロフェッショナリズムという印象を残そうとしているという。
またミネソタ州にあるエクスペリエンス・エンジニアリング社では、顧客にイメージをもたらすキューを「メカニクス」と「ヒューマニクス」に分けて分類しているという。
メカニクスというのは物質によってもたらされるイメージ。
ヒューマニクスとは人間の立ち居振る舞いによってもたらされるイメージ。
つまりエクスペリエンスを提供する場合には、物質的なステージングと人間的なステージングの両方が必要だということである。
舞台装置と演者の両方が揃って初めて、ちゃんとしたエクスペリエンスが提供できるのだ。
そして『企業と顧客のやりとりがもたらす印象や感覚がどんなものか』を常に考えながら、メカニクスとヒューマニクスを構成していかなければならない。