たかがTシャツ一枚に、一万円支払う心とは?
企業が提供するエクスペリエンスのことを、顧客が考える時間が長ければ長いほど、この条件反射は成立しやすいと言えるだろう。
大学のクラブが人里離れた場所に部員を館詰めにして、朝から晩までトレーニングに励むと、普段の練習よりはるかに上達が早かったり要領を得たり、そんな感じで顧客をエクスペリエンスで包み込むことができれば当然。
そしてまたこの「顧客にとって嬉しい習慣」の習慣づけは、企業の提供するエクスペリエンスが、用意周到であればあるほど成功しやすいだろう。
エクスペリエンスをステージングする者は、提供するテーマに関係ないことや、テーマを弱めてしまうことを徹底的に取り除かねばならない。
テーマと矛盾したりテーマから注意をそらせてしまうものを取り除き、そして決して苦痛を感じさせないようにしなければならない。
押しつけがましくなく、そして顧客と同一の目線に立ち、エクスペリエンスを演出するわけだ。
エクスペリエンスを提供する「場(ば)」を、幾重にも重ねることができればできるほど、さらにリピーターを獲得することが可能だろう。
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記念品だからこそ、高い値段で売ることが出来る
経験をうまくステージングできる企業は、何でもないコモディティも、記念品として売ることができるようになるだろう。
たとえばディズニーランドやUSJの中でしか買えないTシャツも、スーパーの若者向けショップで売っているTシャツも、材質や製造コストを見れば大して変わらない。
コスト的に上乗せされるのは、「ディズニーやUSJの商品として売って良いか」という会議のコスト程度である。
だが人々はモノとしては大差ないモノを、相場の何倍もの金を払って買う。
赤と青と白と黒のTシャツがあれば全種類買う。
毎年違ったデザインが出れば毎年買う。
場所によってデザインが違えば、すべての場所に行って買う。
人々はディズニーランドやUSJで楽しんだ経験にひも付いた、ディズニーランドやUSJのTシャツを「楽しかった思い出を引き出すための記念品」として手に入れる。
そしてまたそれをコレクションしたりする。
時代時代の流行歌がそのときの個人個人の経験とヒモ付いているように、記念品が楽しく過ごした時間とヒモ付くので、デザインはその時々の流行で変わってもかまいはしない。
エクスペリエンスを売る企業はこのように、コモディティを記念品として、何倍もの値段でいくつも買ってもらうことができる。
だがそれもこれもエクスペリエンスを上手く演出し、多くの顧客に受け入れられた場合にのみ可能になる話である。
初めにエクスペリエンスありきである。