コーポレートコントロール記事一覧

 本当によい事業資金の調達方法とはなんだろうか。 1980年代、コーポレート・コントロール(企業金融)と言う分野この問題が浮上した。 というのも企業の金融構造や所有、そしてコントロールに関して、とんでもない事態が山ほど起こったのだ。 それは巨大企業の合併、買収、敵対買収、マネジメント・バイアウト(MBO)、バストアップ、スピンオフ、コングロマリットの分解、などという、企業グループの根本的な解体と再...

 アメリカにおけるこうした企業支配関係の変化の多くは、それに関係した企業の金融構造にも大きな変化をもたらした。 企業買収家(乗っ取り屋)や自社株買収に動いた経営者が利用した資金の多くはいわゆる「ジャンク・ボンドjunk bonds」で合った。 ジャンク・ボンドとは、債務不履行になる確率の高い債権であるが、このようなボンドは自己資本に対する企業総価値の比率(ファイナンシャル・レバレッジ)を高めるため...

 1980年代の企業買収や企業乗っ取り合戦の陰の主役は、ジャンクボンド市場の創始者であるドレクセル・バーナム・ランバート証券のマイケル・ミルケンであった。 ミルケンは1970年代末、それまで債券格付け会社によって「不確実で危険」だとされて売り出せずにいた、もう一つ業績の上がらない企業の発行するランクの低い債券(つまりジャンク・ボンド)を、通常の四五倍の手数料を取ることで自分の証券会社で売り出せるよ...

 企業の資本構造の有り様は、二組の利害対立に影響を及ぼす。一つは「経営者と株主との対立」である。 たとえば自社株を100%所有するオーナー経営者は原則的に、会社の費用で高級自家用車を乗り回し飛行機のファーストクラスで旅行をしようと構わない。 また豪華なパーティを開いて金持ちぶりをアピールするのも自由だし、採算の合いそうにないゴルフ場建設に投資するのも自由である。 なぜならその企業の出資者はその経営...

■経営者と株主の対立 経営者陣が自社株をあまり持っていない場合には、経営者と株主との間に様々な対立を引き起こす。 その一つ目は「経営者は企業の成長と存続に重きを置き、株主への配当をできるだけ少なくしようとする」、ということである。 企業が大きくなれば当然経営者の報酬も上がるし、たくさんの人間が雇えて偉そうにできる。社会的知名度もあがる。 だから、社会的にも地位があがる。 だから経営者は株主に配当す...

 ある企業が債務超過に陥っている場合、その企業に対しての投資や融資は行われがたい。 というのも投資や融資をしたとたん、その資金はすぐに債務の返済に充てられてしまい、後から投資した者には何も返ってこない可能性が高いからである。 たとえば何かの事情をやっている会社に今、一千万円の投資を行えば、翌年には二千万円となって資金が戻ってくるような有望な事業だったとしよう。 初期投資の十倍や百倍の売上や利益が出...

 企業の重要な決定において、株主の利益やその他の利害関係者の利益が代表されるようにとりはからうのが「取締役会」の元々の仕事のはずであった。 取締役会は株主の利益が損なわれないように経営者を取り締まり、時には経営者の首をすげ替える、、、そういう役割を持っていた。 しかし実際には取締役会自体が、所有者(株主)の利益をさらに損ねてしまう場合が殆どである。 というのも取締役会の行動を規律づける者や、監視を...

 株主というのは「額面」では企業の所有者であるとされている。 だがしかし企業の株式が細かく分散所有されるに従って、株主の要望は経営陣によって拒否されることが多くなった。 たとえばアメリカのロスペロー氏は、自らの企業を売却する代わりにGMの大株主となったが、取締役に就任してもGMの経営を変革する事はできなかった。 またブーン・ピケンズは、トヨタ自動車のライトを作っている小糸製作所の株式を26%取得し...

 企業がもし負債に対して予定通りに返済ができないようになった場合、貸し手は借り手に返済猶予期間を与えるか、それとも破産に持ち込んで取り立てられるだけをとるかを選択しなければならない。 企業破産に持ち込めば回収できる資産は中古不動産や中古資本財のみに過ぎない。 だが一方営業を続ければ、企業にはそれ以上のものが残る。 たとえば知識豊富な経営者と従業員のチーム、商標とブランド名、事業運営システム、確立さ...

 企業が倒産するとき、株主の持つ株券は紙切れになる。 つまり企業が倒産した場合、企業の資産は債務者の手によって分配され処分される。だから企業の所有者である株主の手には、何も残らない。 企業が債務超過になり倒産した場合、債務は以下のような優先順位で保護される。 優先社債(負債) > 破産弁護士の費用 > 税金> 労働者への賃金支払い > 劣後債権 > 優先株 > 普通株 だが優良企業が何らかの原因で...

 企業とその株価の関係には、1)企業の発行株数が増えると、株価は下がる。2)負債の増加は株価を高める。というような傾向がある。 そしてもっと複雑な有価証券(優先株や転換社債)の取引や、数種の証券の同時売買(自社株買い戻し資金の借入)では、発行される証券が自己資本に近ければ近いほど、株価を下げる効果がある。 このようなパターンは考えてみれば不思議である。 特に2)の「負債の増加は株価を高める」という...

 金融証券は、企業の決定やコントロール権をもたらす。 たとえば・株主は経営者を監視し、経営者に動機付けを行い、組織に規律を与えて戦略を監督する取締役を選出したり更迭する権利を持つ。 企業の資産を大量に売却したり、吸収合併されるなどの決定は、株主の了解がなければ行えない。 債権者は、債務不履行に陥った企業の資産を売却させることができる。 債権者は債務者に対して契約に付帯する条件を履行させる権利を持ち...

 テンダーオファーなどによってテイクオーバーが起こる場合、株式や債権を売り渡した株主には、通常の株価より30-50%高い買い取り代金が支払われる。 これを買収プレミアムというが、時には100%を越えることもあり、ナビスコ社の買収の時には40ドル代で取り引きされていた同社の株式に108ドルもの価格が付いた。 またブリジストンがファイヤーストーンを買収した時には、ファイヤーストーン社の株式の時価総額1...

 1980年代から始まった企業の敵対買収「ブーム」は一方で、敵対買収を防止したり回避するための様々なアイディアを生み出した。 テイクオーバーの防止策として挙げられるのは、ポイズン・ピル差別投票権焦土戦術リストラクチャリング組み分け取締役会絶対多数決ルール従業員持ち株制度などがある。 まずポイズン・ピルとは「毒薬」が元の意味で、テイクオーバー防止のための逆療法を表している。 企業の経営者は乗っ取り側...

 企業の乗っ取りに対し、乗っ取り屋が買収した株式を高値で買い戻すということはよく行われる。 そしてそれに加えてその株式買収にかかった費用も企業が負担するということもよくある。 これらは結局乗っ取り屋に金を掴ませ、乗っ取りを断念させるという策で、そのために要した金(株買い戻しのプレミアム分+α)を「グリーン・メイルgreenmail」と呼ぶ。 ウオルト・ディズニー・プロダクションは1984年の初め、...

 株式会社は株式公開によって株式会社は事業失敗のリスクを分散することができる。 そうすると投資家は様々な企業の株式を所有することによって、自らの投資のリスクを分散させることができる。 自分の資本を使って事業を行えば、どうしても「リスク回避的」になりがちである。そうすると新しい事業に踏み出すことは容易でないが、株式会社であればリスク中立的な行動が可能になる。 それは他人の金で事業を行って、儲かれば自...

 パートナーシップ組織では、さらにモラル・ハザード問題が起こりにくい条件が揃っている。 というのもモラルハザードとは、「ある個人すなわちエージェント(代理人)が、別の個人すなわちプリンシパル(依頼人)の代わりに行動して、プリンシパルの目標を遂行すると想定される状況」(プリンシパル=エージェント関係)で、1)エージェントとプリンシパルの目的がそれぞれ異なり、2)エージェントによる報告や行動が、プリン...

 プロフィット(金銭的利益)を目的としない「非営利組織」には、モラルハザードが起こらないかのような錯覚がある。 だが1989年のカリフォルニア大地震の際に、アメリカ赤十字社は救済目的のために巨額の寄付金を集めたが、その一部を何の公表もないまま他の目的のプログラムに流用した。 またあるキリスト教会組織の慈善活動資金や、インドのグルの集めた資金も、それぞれのリーダー達によって別の目的に流用されたと報じ...