ここまでは、貿易が無視できる範囲内の「閉鎖経済モデル」について考えてきた。 すなわち国民所得勘定(Y=C+I+G+NX)で、NX=0とおくモデルで、国内で生産するモノの殆ど全てを国内で消費し、国内で消費するモノの殆ど全てを国内で生産する、、、、という状態の経済の話である。 だがしかし近代の国際経済において、GDPに占める輸出入の割合は増加する一方である。 カナダやイギリスのGDPの四分の一は輸入...
開放経済記事一覧
閉鎖経済における国民勘定の恒等式は、 Y(総生産)=C(消費)+I(投資)+G(政府購入)であった。 すなわち国内で生産したモノはすべて国内で消費するというわけである。 だが小国開放経済では外国との取引が経済で大きな役割を果たし、ある財やサービスが自国で生産されているか外国で生産されているかは、経済を考える上で見逃せない。 そういうわけで国内で生産したモノを消費したり、国内の産業に投資したりする...
小国開放経済のモデルでは、「資本の完全(自由)移動性」を仮定する。 すなわちこの国の住人や企業は世界の金融市場に完全かつ自由にアクセスでき、政府は企業などの貸し借りに関して何らの介入も行わないものとする。 そしてまたこの経済の影響で、世界の金利は上がったり下がったりはしない。 つまりこの国の実質利子率rは世界利子率r*に等しい、、、というふうに仮定する。 世界利子率r*を決めるのは、世界全体を一...
----------■基本式(復習)---------- 国民所得勘定の恒等式を変形すると、 NX =Y-(C+I+G)となる。 また国民貯蓄SとはGDPから消費Cと政府購入Gを差し引いたモノでS=Y-C-Gであるから、これを上の式に代入すると、 S-I=NXである。 このS-Iを特に「対外純投資」と呼び、S-I=NXの場合のNXを特に貿易収支(トレード・バランス)と呼ぶ。 トレード・バランスとは...
ある外国の政府が政府購入を増やしたとしよう。 その国(或いは国々)が小国であれば世界利子率r*は変化しないが、無視できない経済規模であれば世界利子率r*は跳ね上がる。 世界利子率r*が跳ね上がれば、小国開放経済内の投資I=I(r)は減る。というのも利子率rが上がると金を借りて儲かる商売が減るから、国内への投資が冷えるのである。 一方国内の国民貯蓄Sには大きな変化がないからNX=S-I>0となり「...
日本の貨幣である「円」で、日本国内で生産された財やサービスを購入できるというのは、さほど不思議ではない。 だが日本の「円」でアメリカの製品を購入できるというのは、非常に不思議な話である。 というのももし、あなたの会社に名前も聞いたことの無いような国の商人から商品の発注があったとしても、その国の通貨で支払いをされるとなると、たいがいは困るはずだからである。 何しろ知らない国の知らない貨幣を持ち込ま...
貨幣に「名目価値」と「実質価値」という二つの価値があるように、為替レートにも名目為替レートと実質為替レートがある。 名目為替レート(nominal exchange rate)とはもちろん通貨の額面上の交換比率であり、実質為替レート(real exchange rate)とは、「財貨」の二国間の交換レートである。 たとえば「1ドル=100円」というのは名目レートである。 たとえば「同じ車一台の価...
日本円の実質為替レートが高くなれば、日本のモノやサービスを買うよりも外国のモノやサービスを買う方が安く付く。 そして一方海外から見れば日本のモノやサービスは相対的に高くなる。 つまりレートが高くなれば海外からの輸入は増え、日本からの輸出は減るということになる(純輸出が減少)。 逆に日本円の実質為替レートが低くなれば、日本のモノやサービスを買う方が外国のモノやサービスを買うより安く付くので、海外か...
所得勘定の恒等式:Y=C+I+G+NX から、 NX = Y-(C+I+G) =(Y-C-G)-I ここで国民貯蓄S(公的貯蓄+民間貯蓄)=Y-C-Gなので = S-I また消費Cは可処分所得Y-T(税金)の関数で、Y-Tが増えるとC=C(Y-T)も増えるという順相関の関係にある。 で、閉鎖された経済ではNX=0だからS-I=0となる点に、利子率rが決まる。 逆に...
世界を1つの大きな閉鎖経済だと考えると、世界利子率r*は世界貯蓄Swと世界投資Iwが釣り合う利子率に決まることになる。 で、海外の多くの国が政府購入を増やしたり減税したりすると、S=Y-C-Gだから世界貯蓄Sw が減り、投資に回るお金が少なくなるので世界利子率r*が上昇することになる。 世界利子率r*が上昇すると、国内に投資するより海外に投資する方が有利になる(という場合が増える)ので国内投資I...
さて実質為替レートがどう動くかはわかったが、実際に取り引きされるのは「名目為替レート」で、である。 今日の為替レートがどうなっているかはよくわからないが、1ドル=105円というレートなら、その名目レートで貨幣を交換しなければならない。 では実質為替レートεと名目為替レートeとは、どのような関係になっているかというと、 実質為替レートε = 名目為替レートe ×(自国の価格水準P/他...
閉鎖経済ではNX=0であることから、実質利子率rはS=Iとなるような水準で決定される。<<参考>> r(利子率) ↑ | \ → \ /S=S(r) | \ \ /r'| \ \/ | \ /\↑| \/ \ r| /\ \| / \ \I'=I(r) | I=I(r) ...
さて例によって、政策と経済の関係について考える。 もう三度目くらいだから、みなさん先刻ご承知でしょうが、政府購入Gを増やしたり税金Tを減らしたり(減税)した場合の影響である。 政府が政府購入Gを増やしたり減税を行ったりする(これを拡張的財政政策というらしい)と、国民貯蓄Sが減る。 国民貯蓄SというのはS=Y-C-Gだから、Gが増えると国民貯蓄Sは減る。 また消費Cに関しても、減税によって可処分所...
前回は、政府が政府購入を増やしたり減税したりした場合の影響を考えた。 この場合国民貯蓄Sは減少し、S=I(r)+NFI(r)とrが逆相関関係であることから実質利子率rは上昇する。 実質利子率rが上昇すれば金を借りても儲かる事業が減るが、高金利に引かれて資金は海外から流れ込む。 ここでNX=S-I(r)=NFI(r)で、純輸出NXは実質為替レートεと逆相関、つまりεが上がると輸出が不利になるからN...